「何を始めるか」を決めるより、「何をやめるか」を決める方が難しい。これは、多くの経営者が感じていることだと思います。始めることは希望を持てますが、やめることは失敗を認めることのように感じられるからです。でも、やめることを決めない限り、組織のリソースは分散し続けます。

「やめられない」理由は感情にある

論理的に考えれば「やめた方がいい」とわかっていても、やめられないことがあります。それは多くの場合、そのサービスや事業に関わってきた人への申し訳なさ、過去の投資を無駄にしたくないという感情から来ています。コンサルタントの役割は、その感情を否定することではなく、感情と論理を分けて考える場をつくることです。

ITスタートアップの事例:BtoCからBtoBへ

社員18名のITスタートアップで、BtoCサービスの継続かBtoBへの転換かを決める支援をしました。財務データを見ると、BtoCの収益性は明らかに低下していました。でも、創業時からのサービスをやめることへの抵抗感が強く、議論が3ヶ月続きました。私たちがしたことは、「やめることを決める」ことではなく、「やめた後の姿を具体的に描く」ことでした。

「やめること」の議論の進め方

やめることの議論を進めるとき、私たちは必ず「もしこのサービスが最初からなかったとしたら、今から始めますか?」という問いを使います。この問いは、過去の投資への感情を切り離して考えるのに役立ちます。答えが「始めない」であれば、やめることの論理的な根拠が明確になります。

やめた後の組織の変化

BtoCサービスをやめた後のITスタートアップでは、チームの集中力が変わりました。「あれもこれも」という状態から、一つのことに全員が向かう状態になった。その変化は、財務的な成果より先に、組織の雰囲気として現れました。やめることは、終わりではなく、始まりです。

何をやめるかを決めることは、経営者が一人でするには重すぎることが多いです。その議論の場をつくることが、私たちの仕事の一つです。